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第11話 義母の計算③

Autor: なつめ
last update Data de publicação: 2026-07-18 20:42:35

「侯爵夫人のお言葉のように、穏やかなお声で仰っても、意味の取り方がいくつにも分かれるような表現は、伯爵家ではあまり学ぶ機会がございませんでしたの」

「……」

「ですから、わたくしにはとても勉強になりますわ」

 静かだった。

 声も顔も穏やかなまま。

 だが意味は明白だ。

 穏やかに聞こえる言葉で相手へ含みを持たせる、そのやり方を、今まさに私は学んでいますよ、と言っているに等しい。

 婦人たちの間へ、小さな沈黙が落ちた。

 誰もが理解したわけではないだろう。だが何人かは、はっきり分かった顔をしている。アグネスの「伯爵家では」という何気ない言葉が、単なる褒め言葉ではなかったことを。

「まあ、賢いこと」

 アグネスは笑った。

 けれどその笑いは、さっきまでより少しだけ薄い。

「リリアーナ嬢は、言葉尻をよく拾うのね」

「はい。意味のない言葉はございませんもの」

「それは、そうね」

「特に侯爵夫人のようなお立場の方のお言葉は、周囲へ与える印象も大きいでしょうから」

 今度こそ、空気がはっきり揺れた。

 周囲へ与える印象。

 それはつまり、“あなたの言葉は、ただの
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  • もう二度と、冷徹侯爵の花嫁にはなりません   第14話 地方行きの打診③

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  • もう二度と、冷徹侯爵の花嫁にはなりません    第1話 もうあなたの花嫁にはなりません⑤

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  • もう二度と、冷徹侯爵の花嫁にはなりません    第1話 もうあなたの花嫁にはなりません③

    呼吸が浅くなる。「お嬢様、本当にお加減が……」 「エマ」 顔を上げる。エマは心配そうに眉を寄せていた。何も知らない目だ。この子はまだ、侯爵家の冷たさも、あの結婚がどういうものになるかも知らない。何も知らないまま、数日後には笑って見送るのだ。どうかお幸せにと。 その純粋さが、ひどく痛かった。「婚約調印は……明後日ではなく、四日後だったわね」 「はい。旦那様も奥様も、支度に慌ただしくしておられます。お嬢様のお支度の最終確認も本日中に、と仰っていて」 「そう」 やめなければ。 その言葉が、驚くほどはっきり胸の中に落ちた。 やめなければ、また同じになる。 同じ朝を迎え、同じ家へ

  • もう二度と、冷徹侯爵の花嫁にはなりません    第1話 もうあなたの花嫁にはなりません②

     窓辺の椅子。白木の化粧台。淡い花柄の壁紙。小さな暖炉。磨かれた床板。壁際に置かれた、母が選んだと自慢していた陶器の花瓶。 ここは。 ここは、エヴェルシア伯爵家の、未婚の令嬢だった頃の自室だった。「……エマ?」 声を出した瞬間、自分で息を呑んだ。 高い。若い。喉を使うたびに微かに震えるその声は、侯爵夫人として十年を過ごした女のそれではなく、もっと柔らかく、まだ世間に擦り切れていない頃の声だった。 ベッド脇に立つ侍女が、ほっとしたように眉を緩める。「はい、お嬢様。お目覚めでございますか。少しうなされていらっしゃいましたので、起こすのが遅れました」 エマ。 栗色の髪をきっちりま

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